前回の記事 会社を設立するに当たって準備しておきたい必要なものリストとは? を参考に会社設立のための準備が整ったら、今度は実際に会社設立の手順について簡単に説明しよう。
当ブログでは、合同会社の設立を勧めているので、今回は合同会社の具体的な設立手順について説明していこう。
1.設立項目の決定
まず、実際の設立手続きを開始する前に、あらかじめ基本的な設立項目について決めるところから始めよう。
それは商号、事業目的、資本金の額、本店所在地、社員構成である。
・商号(会社名)
商号というのは会社名のことだ。商号をつける際のポイントは奇をてらわず、分かりやすくて覚えやすい愛着をもてる名前をつけるのが良いだろう。
ちなみに商号はあなたが好きな名前を自由につけることができるが、一応以下のようなルールはあるので、その点を踏まえて商号を決めよう。
1.商号(会社名)の中に必ず「合同会社」を入れる。
「合同会社」を入れる場所は、商号の前後は問わず、「◯◯合同会社」「合同会社◯◯」のどちらでも問題はない。ただし、「◯合同会社◯」のように真ん中に入れるのはNGなので気をつけよう。
2.使用できる文字や記号には制限がある。
基本的に漢字やカタカナ、ひらがな、ローマ字やアラビア数字などごく普通の日本語で用いる文字の種類であれば問題なく使用することができる。ただ、絵文字や複雑な記号などは使えないので、その点は注意しよう。
3.同一の住所に同じ商号(会社名)は使用出来ない。
当ブログではあまりおすすめしないが、自宅ではなくバーチャルオフィスなどを本店住所として会社を設立するような場合、同じ住所にたくさんの会社が存在する場合がある。
その際、同一の住所に同一の商号の会社は存在できない。そのため自分がつけたい名前の会社が存在しないかどうか確認する必要がある。
ただ基本的には自宅を会社の本店住所とする場合は、複数企業が存在することはありえないので、特に気にする必要はないだろう。
また法律としては定められていないが、有名企業と同一の商号をつけると不正競争防止法に基づき訴訟が提起される場合があるので、できれば避けるのが無難だろう。
・事業目的
事業目的とは、会社設立後に実際に何をビジネスとして行うかと言うことだ。また将来的に行う可能性のある事業も記載しておくと良いだろう。
後から事業目的を加えることもできるが、その場合は登記変更のために3万円の費用を法務局にその都度支払わなければならない。コスト削減のためにも会社設立時点で記載すると良いだろう。
ただし、あまりにも多くの事業目的を記載すると、銀行口座の開設時などに事業実態を疑われる要素となってしまうこともあるので、そのあたりは節度をもって記載しよう。
・資本金の額
現在の会社法では、資本金は最低1円から会社を設立することが認められている。
資本金とは出資者がその会社の事業を営むための元手として出資した額のことだ。
資本金の額はいくらでも構わないが、金融機関の口座開設、場合によっては融資額にも影響があるのでしっかりと考えることが重要だ。
・本店所在地
本店所在地とは、そのまま会社の住所のことであり、定款作成や登記申請の際に必要となる。
これについてもよほどのことが無い限り、あなたの住居が持ち家であるならば自宅住所を本店所在地とするのが無難だ。
ただし、あなたが賃貸住宅に住んでいる場合は、その住所を本店所在地として記載して良いか大家さんの了承が必要となる。
場合によっては了承してくれない大家さんもいるので、その際は上記のようなバーチャルオフィスを借りるか、ご自身の実家などを本店所在地とするのが良いだろう。
登記については、本店のすべての住所を正確に届け出る必要があるのだが、定款上は、最小行政区画(「東京都中央区」「大阪府大阪市」までの行政単位の区画)での記載も認められている。
建物の名称変更や同一行政区内での事務所移転の際に定款を変更する必要がなく、コストも抑えられるので、持ち家の自宅を本店と出来ない場合には定款上は最小行政区画での記載としておくのがいいだろう。
・社員構成
合同会社の場合、資本金を出す人を「社員」と定義している。資本金を出した上で、会社の業務を行う社員が「業務執行社員」だ。
我々のプライベートカンパニーにおいて、社員はあなたの奥さん1名で構成すればよいだろう。またお子さんがある程度の年齢(高校生くらいが目安)であれば、社員として記載してもかまわない。
そうすれば役員報酬をお子さんにも支給することが出来るので、より有利に会社の利益をあなたの世帯収入として分配することが出来るだろう。
2.定款を作成する
次に行うことは定款の作成である。定款とは、会社の憲法にあたるもので、会社の設立手続き上、必ず作成しなければならない書類の一つだ。
定款の記載事項には、大きく分けて絶対的記載事項、相対的記載事項、任意的記載事項がある。
絶対的記載事項とは、定款に必ず記載しなければならない事項(その規定を欠くと定款が無効になる)だ。
相対的記載事項は、記載がなくても定款の効力自体には影響がないが、定款に定めない限り、その事項の効力が認められないもの。
そして任意的記載事項は、その記載がなくても定款が無効になるわけではなく、また定款に記載しなくてもその効力が否定されるわけではないが、会社が任意に会社の基本的事項として、あえて定款の中に記載した事項をいう。
一応各事項の定義は説明したが、我々の設立するプライベートカンパニーは家族のみで運営するファミリービジネスなので、基本期に絶対的記載事項のみ定款に定めておけば十分だろう。
さて絶対的記載事項を決めたら、定款の作成に移ろう。設立項目以外で定款に記載する内容は、以下のとおりだ。
- 社員の責任(社員の全員が有限責任社員であることを必ず記載)
- 会社の事業年度 (決算月をいつにするかを決める)
- 損益の分配と分配の割合(奥さん1名が社員なら不要)
- 最初の事業年度(会社の事業年度に準ずる)
- 記名押印
定款に関しては、登記の際に法務局に提出する用と、会社保存用をそれぞれ用意する必要があるので気をつけよう。
3.登記をする
登記書類を作成したら、法務局で会社設立の登記を行う。
法務局で書類申請を行なった日が会社の設立日となる。つまり会社の誕生日になるわけだ。
設立日はいつでも良いが、法務局は土日祝日が休みなので平日の適切な日を選ぼう。
登記の際に必要となる書類は以下のとおり。
- 合同会社設立登記申請書
- 払込証明書(資本金確認のため)
- 印鑑届出書
- 代表社員の印鑑証明書
- 定款2部
法務局に必要書類を提出すると2~3週間程度で会社設立の手続きは完了する。
書類の不備などがある場合を除いて、会社設立の完了通知などはこない。
書類を提出した日に窓口で教えてもらえる会社設立予定日になったら、必要書類などを受け取りに再度法務局に出向こう。
4.会社設立後の届出
登記が終わると会社設立自体は完了するが、それで終わりではない。
設立後に、以下の書類を税務署に提出する必要があるので忘れないようにしよう。
税務署は本店住所地を管轄する税務署に届け出る必要がある。
- 法人設立届出書
- 青色申告の承認申請書
- 給与支払事務所等の開設届出書
- 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書
また、従業員を雇う予定がある場合には、「労働保険、雇用保険、健康保険、厚生年金保険」に関する書類も提出が必要となるが、我々のプライベートカンパニーではとりあえず考えなくてよい。
それから都道府県や市町村にも法人開業の届け出が必要だ。
税務署に提出する申請書類は、おもに国税に関するものだ。そして、会社を設立したら、国税以外にも地方税を支払うことになる。
地方税は、都道府県や市町村に納めるため、それぞれに事業開始の届出(法人設立届出)が必要となる。
書類の形式は都道府県や市町村によって異なるため、法人設立届出書を都道府県事務所と、市区町村の役所へ行って取得しよう。
ほとんどの都道府県、市区町村ではホームページからも申請書をダウンロードできるようになっている。
あなたの所在する都道府県、市区町村のホームページをしっかりと確認しておき、わからなければ直接電話をして聞いてみよう。
また、どちらにも定款のコピーと登記事項証明書が必要となるので準備しておこう。
5.さいごに
会社設立に関しての書類作成など、一通りの準備を終えたら法務局に行って会社設立の申請手続きを行うが、会社設立の手続きは拍子抜けするほど簡単に終わってしまう。
必要書類が全て揃っているかの確認をするくらいなので、本当に数分程度の話だ。
私が申請手続きに行った際には、窓口にはどう見てもパートのおばちゃんだろうという人が、チラッと書類を見ただけで「はい、オッケーです。」となった。
正直、勢い勇んで法務局に行った私としてはちょっと寂しいくらいの対応だった。。。
おそらく、どの地域でも対応は対して変わらないと思うので、あなたも安心して申請手続きを進めてほしい。
さて次は、もう少し注意が必要な項目「会社設立の際に注意したい2つのポイント・資本金と事業目的」について書いてみよう。